優しいタッチで描かれるアニメーション作品Lunette
とある世界のある一日の始まりを優しく描いたアニメーション。自然の美しい描写が特に印象的な作品です。
手書き風の文字でタイトルが入ります。ほんのりとした光り方がまるで月のようです。
「lunette」とはフランス語で、三日月形を意味する単語だそうです。
一匹の狼が月を押しながら森の中を進んで行きます。
真っ暗な森の中で月だけが明るく、画面の中で際立って見えます。
遠景で狼が月を押していく様子が映されます。
先程のカットでは月が大きく目立っていましたが、このロングショットでは周りの風景の存在が大きく、月がちっぽけな一部分の存在であるようにも捉えられます。
狼が更に月を押して行き、その様子を様々な森中の動物たちが目撃します。
狼だけでなく他のキャラクターを巻き込むことによって、狼の行動がこの世界全体にも関係があることを暗示しているようです。
狼が月を押し、他の生き物たちとすれ違いながらどこかへ向かうカットがアップカットとロングカットの両方を駆使して映されます。そしてついに、狼は目的地へ辿り着きます。
狼が目指していたのは火山の火口でした。狼は苦労して運んできた月を、マグマの中へと落とします。
マグマの中へと落とされた月は、燃え盛る太陽になって火山から出てきました。
さっきまで真っ暗だった世界の色が変わっていきます。
火山からさっきまで月だった太陽が昇り、朝がやって来ます。
そして生き物たちが、その太陽を見上げます。
火口に立つ狼と、ゆっくりと昇っていく太陽。通り過ぎていく白い鳥が朝が来たことを象徴し、狼の目的が達成されたことを感じさせます。前半まで寒色が基調だった色合いに暖色が混ざり、カラフルで明るい世界になります。
空を見上げる満足そうな狼。月を運んできた狼のおかげで、この世界に朝がやって来ました。
全体的に整ったレイアウトとバランスの取れた色彩、各キャラクターの動きなどが魅力的な世界です。自然の描写ひとつひとつが、とても丁寧に切り取られて、見る人を物語の中に引き込みます。
最初に主人公の行動の意味などで観客の興味を掴んでおき、最後に全貌を見せてすっきりさせるストーリー展開も見ていて清清しい作品です。